2000年03月29日
健太郎への手紙
貴方からは、たくさんの事を教えられ、知らない世界を学びました。
お店の片隅、ライトも当たっていない小さなキューブ水槽で窮屈そうにしていた貴方に出会って、ちょうど視線が合った時、自然に貴方の名前が頭に流れ込んできて、自然に貴方を我が家へと連れて帰ったのが始まりだしたよね
不安な位に小さな手、小さい身体、小さい口。浮かんだ餌をうまく食べることができなくて、弱い外掛け濾過の水流にさえ負けてしまう不器用な貴方。食べられる餌を探して、早く仕事を切り上げて一生懸命に回れる限りのショップを回って、やっと見つけた「キョーリンらんちうフード」をおいしそうに食べてくれたその時の顔。初めて我が家に来て食事をしてくれた夜。大きくなれ、と心から願った日。
やがて、最初の30cm水槽が狭くなってきて、やっと買った45cmに引越しした日。その水槽、わざわざ新宿から家まで自力で運んだんだけど、そんなことは貴方は絶対に気にしないよね。いつも俺様状態の貴方がそれでも愛しくて大切な家族だったから、頑張ってあんなに重かった水槽セットを持って帰れたんだと思う。思い返すと自分って貴方のために一生懸命だったんだって思うよ、本当に。
月日が過ぎて夏。水温変化に負けて、エラがなくなった日。水温を下げて水質を戻すために、毎日すこしずつの水替えと終日クーラーに切り替えて、本当に色々と手を焼かせてくれたよね。電気代も凄くて。でも、戻り始めた赤いフサフサがとてもうれしかったよ。この頃から、らんちうフード以外は全然食べなくて、メダカとか稚魚とかだったら食べて、どんどん贅沢になっていって急に大きくなりだしたっけ……。
桜の頃から、だよね。急に食べなくなったの。45cm水槽も狭くなってきたなぁと思うほど大きくなって、それでもメダカだのモーリーだの、とにかく何でも食べて、餌の確保が大変だったのに。ふと、気になってたことがあったんだよ、水槽にいた、コケ取りの貝がいなくなってたよね。トケドケした貝殻の大きいのが。いくら貴方でも一口はムリだろうと思う大きさのものをわざわざ探して、入れておいた子だったんだけど、なぜか、いなくなってたよね。まさか、とは思っていたんだよ。
最近、餌を食べないのにずっとお腹が膨れてたよね。まるで風船みたいだったよね?本当に嫌な予感がしてた。だから、急いだの、せめて一度、一夜でいいから、貴方に本当に広い水槽で暮らして欲しかったから。最後の3日、どんな夜だった?どんな日々だった?やっぱり、辛いだけだった?私の自己満足だったのかな?それって。今聞いたって、貴方は土の中で、答えてなんかくれなくて、やっぱり俺様な態度でそのまま眠ってるだけだよね。
最後にもう一つ、謝るね。貴方の命を奪ったのが何なのか知りたくて、調べちゃってごめんなさい。もう同じような事はしたくないから、ちゃんと知っておきたかった。お腹の中のガス、凄かった。辛かっただろうね、こんなに痛いお腹で暮らしてて。よかれと思って入れたのに、何も食べること無かったのに、そんなにお腹がすいてたの?あんな硬くてトゲトゲしたの食べたら消化に悪いって。大馬鹿者。
さようなら、健太郎。そして、ありがとう、ごめんなさい……。
- by えすてん
- at 15:58

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